息子が愛読している朝日小学生新聞の昨日3/14の一面(私のところに回ってくるのには1日かかりますので・・)のトップは「除菌のふき取り1回は× アルコールの成分に効果/カビはむり」という見出しでした。
記事には、埼玉県消費生活支援センターさんが丁寧に調査、実験をした結果が紹介されており、
「除菌」に対するイメージ調査や実際にウエットティッシュで細菌がどのくらい死ぬかの実験をした結果や
皆さんがよく混同される「除菌」「消毒」「殺菌」「滅菌」の違いなどが丁寧に説明されており、さすが小学生新聞さんだと感心いたしました。
※埼玉県消費生活支援センターさんの報告はこちらで詳しく紹介されています↓↓
https://www.pref.saitama.lg.jp/b0304/syouhintest/jyokin02.html
(埼玉県ホームページより)
除菌ティッシュはカビに本当に効果がないの?
上で紹介させていただいた報告でもありましたが、「除菌・消毒・殺菌・滅菌」に加え「抗菌」というワードは巷にあふれており、毎日のように、どこかで除菌や消毒、抗菌といった名前がついた製品を目にしたり、殺菌成分や殺菌作用が・・・というようなコメントなども含め、CMなどでも耳にすることがあると思います。
これらのキーワードを聞くと、なぜだか
なんとなく全部、菌が死にそうなイメージ
そして、
菌というからには、バイキン(※カビ含む)もやっつけちゃいそうなイメージ
になっていると聞いても不思議ではありません。事実、上で紹介した埼玉県消費生活支援センターさんの調査では、
「除菌商品に期待すること(複数回答有り)」という質問の回答には、
約73%の消費者が「感染症や食中毒の予防」と回答し、次いで「防カビ」(約46%)だったそうです。
なんと5割弱の人が、除菌ティッシュでその辺を掃除したらカビが防げると思って期待して使用されている!!ということがわかりました。
確かに、カビのご相談のお電話を受けたり、また、現地調査でお伺いした際によくよく、
「カビが心配だから、除菌ティッシュで掃除しているんですが・・」というお言葉。
上のこども新聞にはシンプルに「カビはだめ」と記載してありましたが、
消毒用エタノールをかければ、カビは死にます。
ただ、皆さんが思っておられる「防カビ」だったり「カビの根絶」には残念ながら効果が期待できない、ということを言いたいのだと思います。
エタノールは簡単には、タンパク質を変性させる効果と、高い揮発性で細胞内部の水分とともに乾燥させてしまう効果があるので、実は、カビもやられてしまいます。
下に、カビ検査マニュアルカラー図譜(監修:高取浩介/テクノシステム出版)のデータより作成した、エタノール(70%)でのカビの死滅試験の結果を掲載いたします。
カビの種類 | 時間(分) | |||||
0.25 | 0.5 | 1 | 2 | 3 | 5 | |
リゾプスストロニファ | – | – | – | – | – | – |
ケトミウム グロボサム | + | + | + | – | – | – |
ユーロチウム アムステルダミ | + | + | + | + | – | – |
ユーロチウム レペンス | + | + | + | + | – | – |
アルタナリア アルタナータ | – | – | – | – | – | – |
アースリニウム | – | – | – | – | – | – |
アスペルギルス ニガー | – | – | – | – | – | – |
アスペルギルス オクラセウス | – | – | – | – | – | – |
アスペルギルス レストリクタス | – | – | – | – | – | – |
アスペルギルス バージカラー | + | – | – | – | – | – |
オーレオバシディウム プルランス | – | – | – | – | – | – |
ボトリチス シネレア | – | – | – | – | – | – |
クラドスポリウム クラドスポリオイデス | – | – | – | – | – | – |
クラドスポリウム スフェロスパーマム | – | – | – | – | – | – |
フザリウム グラミネアラム | – | – | – | – | – | – |
ゲオトリクム キャンディダム | – | – | – | – | – | – |
ペシロミセス リラシナス | – | – | – | – | – | – |
ペニシリウム シトリナム | – | – | – | – | – | – |
フォーマ | – | – | – | – | – | – |
スタキオボトリス | – | – | – | – | – | – |
トリコデルマ | – | – | – | – | – | – |
ワレミア セビ | + | – | – | – | – | – |
上の表で、+とついているものはその時間経過後もまた生存が確認されたもので、-:は死滅が確認されたものとなっております。
この結果を見ると、ほとんどの結果が”-”なのがお分かりいただけると思います。
ただし、気を付けていただきたいのは、
0.25分・・・つまりエタノールに15秒浸しても死ななかったカビがいたということ。
ここでちょっと自分で除菌ティッシュなどを使っているときのことを思い出してみてください。
除菌ティッシュでさっとひとふき!
さささっと手を拭いたり、さささっと机を拭いたり・・・
15秒もじっとさせていますか?
エタノールの特徴は先ほども申し上げたように、その高い「揮発性」です。
どぼんとエタノールに漬け込むならまだしも、さささっと乾燥しやすい環境下で除菌ティッシュを使ったところで、表面の胞子などはいくつかやっつけることができると思いますが、
埼玉県消費生活支援センターさんの実験で細菌が死ななかったのと同様に、
当然、カビも同じように残ります。
さらに悪いことに?!その高い揮発性のために、素材内部に根(菌糸)を生やしているカビには、残念ながら、カビの奥深い根までエタノールが届くことはなく(揮発してしまうので)、またすぐにカビは再発してしまいます。
だから、エタノールなどの揮発性の高い薬品を使った除菌製品に「防カビ効果」はない、と紹介されているのだと思います。
除菌ティッシュの効果的な使い方
上の説明を丁寧に読んでくださってここまでたどり着いてくださった皆様、感謝いたします。
すでにお読みいただいてわかるように、除菌ティッシュや消毒液に使用されているエタノールはカビを殺すことができます。
ただ、根まで殺したり(ついでに言うと、脱色できないので、カビのシミも消せません)することができないので、あくまでも、カビに対してはその場しのぎのものであるということをよく理解しておいてください。
また、エタノールを使うと色落ちしたり、変形したりする素材のものもあるので、どんなものにも有効というわけではないことも申し伝えておきます。
でも、除菌ティッシュや消毒液などの製品はカビや細菌から私たちを守るのには有用な点ももちろん多くあります。
カビに対して言えば、例えば、カビの集落を見つけてしまった場合の初期対応に使えます。
例えば、こんな状態とか・・
こんな状態とか。
ああ、これはカビだわ・・とわかってしまうようなカビを見つけた時は、除菌ティッシュなどの出番です。
この状態でからぶきしてみたり、または濡れた雑巾でとりあえず拭いてみる、というのは
大変危険なNGです!
からぶきするとその風やからぶきしたティッシュや雑巾などに付着した胞子がすぐにどこかに飛んで行って次の集落を作りかねません。
つまり汚染範囲を広げてしまうのです。
また、濡れた雑巾で拭くのもよくありません。胞子の飛散は収まるかもしれませんが、濡らした雑巾ではカビは全く死にませんし、むしろ、カビに水分と養分(ごみなど雑巾に付着しているもの)を与えてしまって逆効果です。
ですから、こういうときこそ、除菌ティッシュの出番です。
そっと上から除菌ティッシュで拭きとってあげてください。
この除菌ティッシュは使いまわさず(何度も申し上げますが、エタノールはすぐに揮発してしまうので、エタノールの効果はほんの一瞬です)次の箇所を拭くときは、かなりもったいないですが、新しい除菌ティッシュで拭いてください。
そして、とりあえず全部が綺麗になったところで、再度、綺麗な除菌ティッシュで拭いてください。
乾燥したらもう一度ぐらい拭くとさらによいと思います。
ここで注意!!
とはいえ、除菌ティッシュといっても様々なメーカーから様々な種類のものがでていて、エタノール濃度や成分も様々なようなので、一概にこれで大丈夫とは言えませんが・・・・
もし、余力があるのであれば、消毒用エタノールなどしっかりした濃度を維持している商品を常備しておいて、それを使うのがより効果的です。
・・除菌清掃後は
そしてよく乾燥させて、よく換気をして数日間、よく見守ってください。
使用していてまた出てくるようでなければ、問題ないですが、再発するようでしたら、根まで殺さないといけない状況なので、プロに相談してください。
というわけで、除菌ティッシュをお掃除に使うのは(非常に高コストですし商品にもよりますが)表面の細菌含め、カビも殺してくれる可能性が高いので、カビ臭い雑巾でお掃除するよりは(もちろん)かなり有効です。
でも、除菌ティッシュだからといって長時間そのまま使ったり、除菌ティッシュを濡らして、再利用したりしては雑巾と同じ状態で意味がありません。
くれぐれもエタノールの速乾性や濃度に気を付けながら、除菌ティッシュは一度だけ使用する、
除菌ティッシュに防カビ効果はない、と理解したうえで、カビについては、経過観察に徹する
という気持ちをもって、カビ対策にあたってください。
まとめ
残念ながら除菌ティッシュで掃除したからといって防カビ効果はありませんが、カビを見つけた時は除菌ティッシュで取り除くことは一時的には有効です。
また、複数回丁寧にエタノール入りの除菌ティッシュを使うこともカビを除菌することにも有効です。
除菌ティッシュの種類や成分にも少し気を付けて目を配りながら、過度な期待を抱かず、あくまでも一時的な表面の菌量・胞子量の低下にすぎないことを理解いただいたうえで、ご活用ください!
再発するような場合や付近にも同じようなカビの集落を見つけてしまった場合は、汚染が進行しているか広がっている可能性があります。
そんな場合は除菌では解決しないので、プロにご相談ください。
オールワンもいつでもご相談、ご質問を承りまっております。
除菌ウエットティッシュでカビは死なない?
確かに